一つの作品が完成するには、多くのスタッフの力が必要となる。『コードギアス 反逆のルルーシュ』もまた例外ではない。さまざまなプロフェッショナルの力が一つの結晶となり、『コードギアス』という作品に輝きを宿らせたのである。

「BGMと挿入歌。そして担当分の主題歌。そういったところの制作全般を取り扱う仕事」

 石川は「音楽プロデューサー」とクレジットされる自分の役割を説明する。たとえば谷口悟朗監督の過去作品にあって、中川幸太郎、黒石ひとみという二人のアーティストを紹介したのは石川だ。そして二人が『コードギアス 反逆のルルーシュ』にも引き続いて参加している。

「谷口監督は音楽について、作品ごとに明確な狙いを持っている方です。今回は、中川さんにブリタニア帝国など重厚な部分を、黒石さんには挿入歌とC.C.を中心とする部分を依頼したいと。さらに『コードギアス』については、最初から盛り上げていきたいので、TVシリーズがスタートする時点からたくさんの曲数がほしい、という強い意志をお持ちだったことがあり、ではそれに応えていこうということで実作業を進めました」

 BGMの発注にあたってはまず、どんなイメージの曲が何曲ほしいかを監督と音響監督がまとめた「音楽メニュー」が書かれる。作曲家は、このメニューの意味を解釈しながら作曲を行う。

『コードギアス』の第一期は2回の録音で、約80曲のBGMが収録されたが、そのうちの3分の2強にあたる55曲が、1回目の録音によるものだ。通常の2クール作品における総曲数が60曲程度であることと比べると、かなり曲数が多いことがわかる。


 中川は谷口監督と組むのは4回目。黒石も挿入歌のみを含めて3回目。
「何度も同じ監督と組んでいると、コミュニケーションがとりやすいということがある一方で、音楽的な切り口をどう変えて、新鮮なアプローチにしていくか、そこが難しいところです」
 仕事をする上で石川が心がけているのは、アーティストがベストを尽くせる環境を整えること、だという。

「それにはまず、どんな音楽家とどう組んでもらうか、という顔合わせの部分が重要です。これは自分の仕事の中でも、かなり大きな部分を占めています。誰もが納得する顔合わせで行くこともあれば、逆に意外な人選をしたり。そ して次に、その音楽家がベストのパフォーマンスが出せるように、環境を整えていきます。イメージとしては、アスリートが走りやすいようにコースを設定して、環境を整えていくイメージでしょうか。こうして作品が成功して、音 楽家の評価が高まる、というのは喜びの一つです」

 プロの仕事を支えるプロフェッショナル、それが音楽プロデューサーの仕事なのだ。