ビデオ編集。完成した映像をとりまとめ、放送局に納品する「完パケ(完全パッケージ)」「に仕上げる、アニメ制作の最終工程だ。山手はその工程の責任者であるエディターだ。
「アニメの制作工程は、400カット近くあるカットをばらばらに作業しています。それを1本のまとまった映像として見られるのは、最終工程のビデオ編集の時だけ。そこで通して見て、各カットのつながり具合を調整したり、必要な効果を映像に加えたりして、全体を仕上げていくんです」
山手と谷口悟朗監督とのつきあいは長い。既に10年を超える。その間にアニメの制作工程はデジタル化が進み、フィルムを使うことはなくなった。だが、仕事の仕方は基本的に変わっていないという。
「まず一番最初に、編集の森田清次さんがつないだ通りに、各カットをつないで1本の映像にします。それを頭から見ていって、気になるところがあれば、監督が挙手して(笑)、変更の指示をする、という具合です。
たとえばメカが接近するシーン。現状ではピントが合った絵になっているとします。でも、急激に手前にきたら、カメラのピントが合わなくなるはずでしょう。ならば、少しボカしの効果を入れると、映像にリアリティが増します。似たような効果は、撮影段階でも入れられますが、やっぱりカットがつながってからわかることも多いです。谷口監督はビデオ編集の段階でかなり手を入れる監督です」
そんな山手が仕事をする上で意識しているのは、映像を構成するさまざまな要素に興味を持つこと。
「最近の若い子は、最初から映像編集、最初から音響という具合に志望を絞りすぎていると思うんです。結果、隣の領域に興味が薄くなってしまう。ビデオ編集を含むポストプロダクション(作品を最終的に完成させる音響・編集工程)は、いろんなセクションからいろんな素材が集まってきて、それを料理して1本の作品にする工程。だから映像も音響もどちらも含めたいろいろな知識を総動員しないと本当はできないんです。僕自身、そういう心構えで作業していますし」
だから山手の守備範囲が広いし、スタッフからの信頼も厚い。特別番組として放送された第1期のSTAGE24&25。
このOPを作ったのは、山手だ。
「STAGE23までのTVシリーズの映像と、DVDパッケージ画像を使ってという注文でしたが、結構入れ込んでつくりましたね。そこでうれしかったのは。、谷口監督が『ここまでやってくれたんだから演出としてクレジットしましょう』といってくれたこと。しかも、僕はあくまで放送用のもの、という意識だったんですが、これがSTAGE24&25の正式なOPということになって、DVDにも収録されることになった」
山手は映像特典のピクチャードラマでも、その演出の腕前を振るっている。基本は「紙芝居」のコンセプトでスタートしたピクチャードラマ。山手の手によって演出をほどこされ、静止画でありながら見応えのある内容になっているのは、ファンならご存じの通りだ。
いい作品を作り上げるために、自らの腕をふるう。その結果としてエディターなり演出といった肩書きがつく。その仕事ぶりがまさにプロフェッショナルなのだ。