一つの作品が完成するには、多くのスタッフの力が必要となる。『コードギアス 反逆のルルーシュ』もまた例外ではない。さまざまなプロフェッショナルの力が一つの結晶となり、『コードギアス』という作品に輝きを宿らせたのである。

キャラクターやメカなど、動画で描かれるすべてのものの色を決める役職。
それが色彩設計だ。白くないランスロットが、赤くない紅蓮弐式がもはや想像できないように、色彩設計は色を使って作品の世界観を構築するのだ。
だからこそ前シリーズのスタート時は、苦労が多かった、と岩沢は振り返る。
「リアルさと派手さのせめぎ合い、ですね。どちらも必要なのが『コードギアス』ですから、それをどうバランスさせればいいのか。
普通、一度、色を決めた後に、谷口監督ほかスタッフに見てもらって意見を聞くんですが、そうしているうちに、どれがふさわしい色なのか、自分でもわからなくなってしまうことがあって、『もう一回考え直してきますから』と案を取り下げたこともありました」


そうして作り上げた『コードギアス』の色の世界は『R2』でさらにパワーアップ。
「『R2』は前シリーズよりも押し出しを強くしたい、というのが谷口監督のオーダーでした。だから、色遣いも派手になっています。特徴的なのは、ナイトオブラウンズですね。
監督からのオーダーで、マントの色を全員変えました。
自分ではちょっと派手すぎるんじゃないか、とも思ったんですが、それがOKになって……。

ナイトメアフレームのトリスタンやモルドレッドも、鮮やかな色遣いになっていますし、そういう意味では、『R2』のほうが吹っ切れた色遣いになっていますね」

色で世界観を作り上げる時には。色のマジックが欠かせない。
たとえば、ゼロのマントやアッシュフォード学園の男子制服、視聴者はそれぞれ黒とグレーだと感じている。けれどもよく色を見ると、マントは濃い紫だし、制服はわずかに青みがかかっている。 「アニメの画面でそのままの黒やグレーを使うことはないんですよ。黒はものすごく薄っぺらく見えてしまうし、彩度をまったく抜いたグレーだとそこだけモノクロになったように見えてしまうので」 そのままの色を塗るのではなく、「そのように見える色を塗る」というのが色彩設計のマジック。そこにプロの技がある。

うまく色が塗れたと思うのは紅蓮弐式という岩沢。仕事の苦労を癒してくれるのは愛犬だという。「名前はモモといいます。毛がモフモフしているウェルッシュコーギーなので、家に帰ってそれをなでているだけでほっとします(笑)」