座談会

第1回 第2回 スペシャルトーク『ナナリー in ワンダーランド』ができるまで 前編 馬場誠(監督)+野村祐一(脚本)+河口佳高(プロデューサー)

―企画の発端はどこからだったんでしょうか?

河口 コンビニエンスストアなどで展開する「一番くじ」の企画ですね。そのために木村貴宏さんが描いてくださったキャラクター集合のイラストがあったんです。それが『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』を下敷きにしていたんです。サンライズ社内で、そのイラストをもとに絵本にしたい、という意見があったところ、それを聞いたバンダイビジュアルさんが映像にしましょう、とおっしゃって制作が決まりました。

―それでまず声がかかったのが野村さんですか。

野村 そうです。ちょうど回転寿司で食事しようとしていたところ、河口Pから電話がかかってきて、食べるに食べられない状況になったことを覚えてます。河口さんからいわれたのは……「おもしろくなればいいから」ぐらいですかね。

―それはかなり無茶ぶり、ということですよね?

野村 無茶ぶりです(笑)。 河口 そうですね(笑)。 野村 (笑)ただ、下敷きに『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』がありますし、木村さんのイラストを見ればキャラクターがばっちり立っている。そういう意味では、もう大事な部分はじゅうぶん出来上がっているんですよ。もうそれだけでおもしろいじゃないですか。なので、素直にそれに則って脚本を書きました。なにしろ『ギアス』はキャラクターがたってますから、セリフも苦労することなく自然と、いわゆる「キャラがこうしゃべりたがっている」という感じでどんどん書くことができました。

―監督の馬場さんはどの段階で参加されたんでしょうか?

馬場 僕は野村さんの脚本がほぼ決定稿になる、というあたりで声がかかりました。ただその時点では「BABA劇場」(『R2』のDVD・BDに特典として収録された馬場氏制作のFLASHアニメ。ギアス・キャラたちによるシュールすぎるギャグが話題に)のノリでいくのか、静止画中心のピクチャードラマでいくのか、まだ決まってませんでしたね。とりあえずシナリオが出来上がったら、絵コンテを頼みたい、ということで。その後絵コンテが出来上がったら、演出処理も頼みたいといわれ、気がついたら、監督ということでいいから、ってなっていました(笑)。 河口 (笑)スタイルが決まってなかったのは、その時点で予算が決まってなかったからっていうのもあるんです。 野村 僕が脚本を書いている段階でも、基本は絵物語のような感じになるのかな、と思っていました。ところどころお楽しみのようなかたちで、普通のアニメーションが入るのかな、ぐらいで。 馬場 結局、そこに落ち着きましたね。

―総作画監督は木村貴宏さんです。

馬場 そうです。ありがたいことに。今回はスタイルとして、静止画+αぐらいの動きで見せるパートと、普通にアニメーションするパートを組み合わせていくスタイルですが、最初は使っていい枚数がかなり少なかったんです。でも、木村(貴宏)さんも、もうちょっとちゃんと動かしたいという考えだったので、「まあ、決められた枚数の倍ぐらいまではいいだろう」って勝手に自分で決めて作ってしまいました(笑)。最終的な枚数は結局、当初言われた枚数の倍以上になっていまして、その点では、想定よりもずっとゴージャスな映像になりました。

―今回は一種のパロディ編、ギャグ編という位置づけですが、やはりネタは脚本の段階から仕込んで
あったのですよね?

馬場 僕は基本、脚本を踏襲して映像化しているだけのつもりですが……(笑)。 野村 えー、かなりふくらんでますよ! 絵コンテ見て、ここまでスゴいものがくるとは思わなかったですから(笑)。 河口 絵コンテは、木村さんがものすごく絶賛していましたよね。これはおもしろいって(笑)。
馬場 ありがたいです。ただ、。最初はてっきり、アリス風のコスプレしているぐらいで、内容は全然関係ないのかな、と思っていたんですよ。そうしたら読ませていただいたら、きっちりベースにしいてあるので、これは原作をちゃんと読み直さないと演出できない! って思いましたね。「どういうふうに原作を読み直したら、こんなふうになるんだ!?」」という指摘もあると思いますが(笑)。 野村 いや、そうなると思いますよ! 馬場 なりますか。 河口 あの、ユーフェミア扮する白の女王が、羊に乗ってくるじゃない? あれはなにか原作にあるの? ずっと疑問なんだけれど。
馬場 白の女王って、羊にちなんだアイテムがよくでてくるキャラクターなんです。なので羊とブリタニア軍が使ってるG-1をかけて、「ヒツジー1」というメカに乗っているということなんです(笑)。G-1に着ぐるみをきせたようなシルエットになるように、アニメーターさんに描いてもらってます。 河口 ええ、そういうことだったんだ(笑)。

―意外なところで原作に忠実なんですね。では、次回は制作上の苦労についてうかがえればと思います。