インタビュー

スペシャルインタビュー 作って楽しく、見て楽しい作品にキャラクターデザイン・作画監督 木村貴宏

―企画の発端はコンビニエンスストアで展開する「一番くじ」用のアイデアからと聞いているのですが。

そうです。最初は『不思議の国のアリス』じゃなかったんですよ。一番くじの景品になるC.C.、ナナリー、アーニャのフィギュアをどういうコンセプトにするか、自分と田畑(壽之)くんとで相談していたんです。そこで「メイド服でケーキ作り」というアイデアが決まり、僕はC.C.とナナリーがメイド服を着たイラストをフィニッシュしました。そこでナナリーにアリスっぽいエプロンドレスを着せたんです。その見立てにサンライズの人が反応してくれて、ならばほかの景品も含め『アリス』のコンセプトで統一しよう、という話になったのです。そこが今回の企画の原点といえば原点でしょうか。

―そこで『アリス』の意匠でまとめられたキャラクターの集合イラストが描かれたわけですが、キャラクターがうまくはまっていますね。

『アリス』にはとてもたくさんキャラクターがいますし、ストーリー性のつよいお話でもないので、『コードギアス』のキャラクターと絡めやすかったというのはありますね。ルルーシュの帽子屋、C.C.のチェシャ猫なんかは迷うことなく決まりました。スザクも『鏡の国のアリス』で白の騎士がアリスを導くので、これはそのままスザクだろう、と。イラストという点で言うと、共通して盛り込む意匠が決まっていると、ファッションも楽しく描けるんです。で、この集合イラストがおもしろそうだ、ということで、絵本の企画を経て、アニメ化が決まりました。放送が終わってそれなりに時間がたっているのに、こういう企画ができるのは、うれしいことです。

―映像化のスタイルはどういうふうに決まったんでしょうか。

最初はイラストドラマ的なスタイルで、というアイデアもありましたけれど、本編スタッフで制作するわけですし、ちゃんと動かしたいよね、と。それで最終的に、絵本のように展開しつつ現在のように若干のアニメーションが入るという形になりました。あと今回はあの「BABA劇場」の馬場さんが監督するということなので、ならばネタ満載のおもしろいものになるのは確実だろうと(笑)。実際絵コンテを見たら、『アリス』と『コードギアス』というお題をおもしろくまとめてくださった脚本よりも、さらにふくらんでおもしろくなっていましたから(笑)。

―今回描いていて楽しかったキャラクターはいましたか?

そうですね。もともとある意匠で統一してキャラクターで遊ぶようなノリは好きなんです。今回はそんなノリに合わせて本編よりも若干頭身を下げて描いてます。だから、どのキャラも楽しく描きました。その中であえて選ぶとすると、ニセウミガメになったロロは楽しかったですね。イラストでは甲羅の側からしか描いていなかったんで正面をどうしよう?と考えたんですが、いーや、そのままやっちゃえーと(笑)。

―ハンプティ・ダンプティ役の星刻も、イラストでは足まで描かれていませんが、本編では全身像が登場してます。

ハンプティ・ダンプティの星刻は馬場さんの絵コンテで初めて全身が描かれていたんですが、おもしろかったので、そのままフィニッシュしていますね(笑)。

―木村さん自身が好きなシーン、印象に残ったシーンはありますか?

僕自身が描いたカットではないんですが、セシルのお弁当はおもしろかったですね。特にギョウザのピクピクする動きが絶妙で、実に最高でした。あとすごいと思ったのは、やはり名塚さんのお芝居ですね。ギャグの間の取り方が絶妙で、全編とてもおもしろく見られました。

―ファンの方にここを見てほしいという部分はありますか?

そうですね……。本編の展開以外でいうと、女性キャラクターが、それぞれ僕の趣味まるだしの衣装を身にまとっているので、そのあたりは楽しんでいただけるかもしれません。服の構造がどうなっているのか、ちょっと考えていただくと、お楽しみが増えるんじゃないかと思います(笑)。

―ファンの方にメッセージをお願いします。

作って楽しく、見て楽しい作品に仕上がったと思います。1回きりの本編スタッフによる「本気のお遊び」を楽しんでいただければうれしいです。