座談会

第1回 第2回 スペシャルトーク『ナナリー in ワンダーランド』ができるまで 後編 馬場誠(監督)+野村祐一(脚本)+河口佳高(プロデューサー)

―作業をしていく上での苦労を教えてください。

野村 最初に「おもしろくしてください」ってエラい人(河口P)からプレッシャーをかけられた以外は(笑)、あんまり苦労らしい苦労はなかった印象ですけれど……。あ、ルルーシュの扱いはちょっと悩みました。そもそもが語り部であることは決まっていたんですが、それだと本筋にまったく絡まなくなってしまう。そこをどう工夫して、オチにつなげていくか。最初はそこがまだ決まり切っていなくて、途中でそこが決まったことで、全体の枠組みがきちっとできあがった感じですね 河口 『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』はどれぐらい意識したの? 野村 うーん、2作とも構成は近いんです。どちらも、アリスが少し変わった国に迷い込んで、次々と一風変わったキャラクターと出会って、最後はなんとか現実に帰ってくるわけで。だからその構造だけ採用すれば、あとはキャラクターをうまく出してあげれば、「in wonderland」という感じになるだろうな、と思いました。 河口 『不思議の国』も『鏡の国』も完全にニコイチにしちゃったんだよね。 野村 そうですね。たとえば王様系のキャラクターは全部ラストに固めてしまうとか、そういうことはしてます。細巻き2本食べるより、太巻き1本のほうがボリュームあっておいしいでしょう、みたいな盛り込み方ですね(笑)。

―本編を見ると、最初は素直に『不思議の国』風に始まりますが、次第にノリが馬場監督らしい方向に傾いていきます。

馬場 絵コンテを描き始めて、20カットも描くと、普通のことをやっているのにだんだん飽きてくるんですよ。それで、どんどんネタを仕込むようになってきて。ラストにいくにつれて少しずつエスカレートしていきましたね(笑)。

―なかでも、最初にでてくるドードー鳥の咲世子がアップになるあたりが分岐点だったように思います。
あそこから「BABA劇場」に近いテイストがぐっと前面に。

馬場 咲世子のアップは、撮影さんにリテイクを2回お願いしたこだわりのカットですね。あそこはわざと画像に近寄って、荒れている映像を見せたかったんです。けれど、撮影を担当したアニメフィルムさんが見事なフィルターワークできれいな映像に仕上げてくれたんです。それで、フィルターは全部はずしてください、とお願いして。もっと荒れた画像でいいです。ドットがカクカク見えるぐらいでいいですとお願いしたんです。

―各キャラクターが独特のはじけ方をしていますが、アフレコはどんな様子だったんでしょうか。

馬場 30分に満たない長さの作品ですが、とにかくキャラクターが多かったですね(笑)。ルルーシュ役の福山(潤)さんは、物語を朗読するところと、物語中のキャラクターたちにツッコミを入れる部分がめまぐるしく入れ替わるので、そこが大変だったようです。ロイド役の白鳥哲さんは、ノリノリで叫んでいただきましたね。逆にニーナの千葉(紗子)さんには「もっと叫んでいいです。もっと叫んでいいです。」とお願いしました。おかげさまでニーナはかなりおもしろくなったと思います(笑)。

―そういえば終盤で、スザクとジノの戦闘シーンもあるんですよね。

馬場 (笑)あります。あそこは河口さんの狙いもかなり入っているんです。 河口 半分だけ真面目な話をすると、今回、いろんな手法が入っているアニメにしたかったんですよ(笑)。静止画だけれど、演出によるタイミングのコントロールで、おかしさが醸し出されているパート。ちゃんとアニメとして動いていることが魅力なパート。そして、もう一つが、CGを駆使したパート。スザクとジノの戦闘シーンはこのCGによるパートになるんですが、馬場監督は、この3つをすごくうまくバランスしてくれたと思います。 馬場 ただ、確かに言葉でいうなら「CG戦闘シーン」といえばウソではないですけど……(笑)。 野村 いやいや。ガチバトルでしょう(笑)。 河口 どんな戦闘シーンかは、見てのお楽しみでしょうかね(笑)。 馬場 CGでなくてはできない戦闘になっているということは確かですね(笑)

―最後にファンのみなさんに一言お願いします。

野村 頭からシッポまで楽しい作品に出来上がっていますので見ていただけるとうれしいですね。 河口 そう、サービス精神があふれているのは確実な映像ですので、そこを楽しんでいただけるとうれしいですね。 馬場 「BABA劇場」を楽しんでいただけた方ならばきっとおもしろがっていただけると思いますので、よろしくお願いします。