一つの作品が完成するには、多くのスタッフの力が必要となる。『コードギアス 反逆のルルーシュ』もまた例外ではない。さまざまなプロフェッショナルの力が一つの結晶となり、『コードギアス』という作品に輝きを宿らせたのである。

メインアニメーターとしてキャラクター作画の要だった千羽由利子。キャラクターを描く上で心を配っていたのは「作画がお話の邪魔をしない」ということだという。
「『コードギアス』は、脚本の段階からテンションが高い物語なんです。それにあわせて声優さんの演技もものすごくテンションが高い。そういう時に、絵のテンションが低かったりすると、そのほかのテンションの高さが台なしだなぁ……って思うんです」

 もちろんそういうこだわりは、自分をより厳しいところに追い込むことにも繋がる。でも「そうしたほうがいい」と思える雰囲気が『コードギアス』にはあるという。
「そこは要は愛ですよね(笑)。スタッフみんな『コードギアス』が好きだったから、できたことかなって」
 千羽はアニメの魅力を「絵で描かれたキャラクターが、まるで生きている人間のように感じられること」という。
「自分で描いた絵は、気になるところがあって素直に見られない部分もあったりするんですが、作品を見た方が、キャラクターを本当に生きている人みたいに感じてくれていると、とてもうれしいですね」

 そしてキャラクターの存在感に欠かせないのが、その心情を的確に表現すること。
「たとえば怒るというお芝居一つとっても、前回と今回では怒り方が違う、ということを表現して伝える必要があります。ルルーシュを例に挙げると、演技で笑っている時と本気で笑っている時があって、それが一目見てわかるように描いてなければ、そこでなぜその演技をしているかの意味が伝わらないですよね。だから少しでもヒントを探そうと思って、あまり作画関係は出席しない、谷口監督と演出さんの打ち合わせにも出席するようにしていました」

 そんな千羽が、仕事をする上で気を遣っているのは健康管理。 「もともと1日一食とかで暮らしていたんですが、一度、作画監督期間中に病気になって倒れてしまったことがあったんです。それはもう自業自得で、痛み止めを飲みながら作業をしたんですが、それ以来、もうちょっと健康管理に気を付けなくちゃと思うようになりました。今は、食事をちゃんととるように気を付けています」
 一点にこだわる集中力と安定して仕事をする持続力。プロだからこそ、高いレベルでその二つをどう両立させるかを考えているのだ。

おまけ
「画材屋でタップ(動画用紙を固定する金具)を買おうとしたら、『プロ用タップ』と貼られたタップがあったんです。『そうか、プロ用かぁ、なら買わないと(笑)』と思って買ってみたんですが、どのあたりがプロ用だったのかなぁ(笑)」